今年の夏はドイツでも本当に暑かった。東北部に当たる旧東独地域では雨が降らず、旱魃で穀物の収穫が大幅に減ったといわれた。普通ドイツでは夏も雨ばかりで、だから昔は太陽を求めてイタリヤやギリシャなどの南欧へバカンスに出かけた。 今年はミュンヘンなどの南ドイツも毎日いい天気で雨もあまり降らなかった。北極圏でも30度近くになり、永久凍土がとけだしたいう。これは多くの人々が恐れていたことだ。この結果それまで氷の中に閉じ込められていた大量のメタンガスなど炭化水素が報酬されて温暖化現象を決定的にするからだ。 温暖化現象などあまり考えないほうだった。ずっと先のことだと思うことにしていた。昔、はじめてこのテーマについて読んでいると、ドイツも砂漠のようになると書いてあったが、ピンと来なかった。ずっと後になってスペインへ行くようになって緑が乏しい岩山が多く、昔は木が生えていたと聞いてイメージがわいた。その後、地球各地でそれも北のほうで山火事が多くなる。こんなことが繰り返されるうちにだんだん砂漠のようになって行くのかと思われた。 夏が終わった頃、我が家の庭の隅っこにあるプラムの木を見て驚く。日当たりが悪いところにあるせいか丈も小さく、毎年私もプラムの木ですよ、という感じでご愛想程度実がなる。数えることができるくらいで、あまり美味しくない。ところが、今年は仰天した。こんなたくさんの実を見たことがないほど数が多い。食べると甘く美味しい。平年と比べてはるかに小粒であった。小さくなった分だけ味がいいように感じられた。毎日のようにそこへ行き食べているうちに、ある生態学者のいったことが思いだされた。彼は日本人で、昔京都とアフリカのキャンプの途中にミュンヘンに来て我が家によく滞在した。 彼によると、自然界には原則のようなものがあり、種は自分の生存が脅かされると、繁殖に際して個体を小さくし、その数が無闇と増大するそうだ。プラムの木を見ていて、このことが思い出されて、少しイヤな気持ちがした。このプラムの木もこれから地中の水が少なくなるのを予感し、少しでも子孫を残すために個体を小型にして数を増大させる種の生存ストラテジーをとって、種の絶滅の可能性を少なくしているのであろうか。 でもこのような生存ストラテジーを取らない生物もいる。有名な例は恐竜で、ホモ・サピエンスも各個体を見ると大きくなるようにみえる。
それはそうと、このプラムはドイツ語でZwetschgeで美味しい。名残り惜しい感じがしてきて、 私は脚立を取り出して立て可能な限りたくさん収穫した。ジャムにしてもらうためである。