トランプをバッシングしておけば間違いないとするメディアは多いが、この点で朝日のオリバー・ストーン監督インタビューは面白い。
「トランプ大統領、悪くない」 オリバー・ストーン監督
http://digital.asahi.com/articles/ASK1K5V6BK1KUHMC001.html?rm=982
ストーン監督が「悪くない」と考えるのは、トランプ大統領が従来の「レジームチェンジ」をやめるといっているからだ。理由は、「米国による新世界秩序を欲し、そのために他国の体制を変えよう」として国力を消耗することは「アメリカ・ファースト」という原則に反する。これはトランプが選挙戦で繰り返して述べた。また彼はレジームチェンジのために秘密工作する自国情報機関に批判的である。この対立は就任直前まで継続した。こう考えると、平和を重要視する人々がトランプのこのような側面を無視するのは奇妙である。
次にストーン監督が指摘する点はトランプが自国民の雇用や生活を心配する点だ。どのように雇用をうみだすことができるのかはストーン監督にも見当がつかないそうだが、それでも分配の問題が少しでも前面に出てくるのは重要である。
貧富の格差はグロバリゼーションによってどんどん拡大した。あまり問題にされなかったのは、民主化・自由化の旗印や、パイ全体が大きくなるとか、自分は勝ち組に残れるという期待につられているうちに進行してきたからである。本来敏感であるべき左翼が拱手傍観してしまったのは、(ジャン・ボードリヤールが9.11の後にいったように)「人権という目潰し」をくわされて分配の問題を見なくなったからである。この事情がトランプ登場を可能にした。ストーン監督がいうように、現状ではどう展開するかわからない。
インタビューはオリバー・ストーン監督の映画「スノーデン」が日本で公開されたからだ。映画のかなりの部分はドイツのミュンヘンで撮影。写真はこの映画の中の横田基地の場面である。コンピューターに坐っているスノーデンの傍らを、書類を片手に禿げてデブの男が通り過ぎる。この男は、何を隠そう、私だ。当時製作助手が娘の知人で日本人男性が足りなくなったと頼まれる。本当は制服組に入れてもらえるはずだったのが、ビールの好きな私に合うサイズがなく、急遽シビリアンに転向。夜遅く部屋の中を何度も歩かされるのには少し閉口したが、今では通行人でも米映画に出られて光栄に思っている。