投稿者「admin」のアーカイブ

ドイツの自動車の動力源(2)

  • 発行:2019/07/1

概要

ドイツで電気自動車(EV)シフトが始まったが、自動車メーカーによるEV攻勢には反発や懸念の声も聞かれる。こうした中、2018年度にドイツで新車登録された「純粋なEV」は全体の1%にすぎず、EV用電池の供給過剰が続くと予測され、欧州の電池メーカーが投資に消極的な姿勢を示している。

バッテリーの意味
ドイツの自動車関係者と電気自動車(EV)について話したり、またメディアの報道を見聞きしたりしていると、彼らがバッテリーを(ガソリンの代わりに)電気を貯めておく「燃料タンク」のように考えているような印象を持つことがある。そのため、電池こそEV市場での差異化戦略の重要な要素だという見方はあまり強いように思われない。それでも、ドイツ自動車メーカーはバッテリーについていろいろと対策を講じている。

ダイムラーは、以前はリチウムイオン電池セルの製造を検討していたが、現在は外部から購入することにした。これについては2018年末に発表されたが、2030年までに必要とされる200億ユーロに相当するセルが確保されたといわれる。車載される電池パックシステムはこれらのセルから製造されるが、その工場は3大陸にまたがって6カ所に設立される。いずれも、既存または新たに建てる工場の近くに位置する。ブリュール、ドレスデンの近くのカーメンツ、シュツットガルトの近くのウンターテュルクハイム、へーデルフィンゲン、ジンデルフィンゲン、米アラバマ州のタスカルーサ、北京の工業団地、タイのバンコク、ポーランドのヤボールなどである7

BMWのバッテリーポリシーは少し異なる。中国の電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)はエアフルトの近郊にバッテリー工場を建設中だが、場所選びや資金調達についてはBMWが便宜を図ったといわれる。この工場が欧州でバッテリーセルを製造してくれるのは、どの自動車メーカーにとっても望ましいことである。資金をあまり出さずにこのように特別な関係を築くのが、このミュンヘンの企業の考え方である。韓国のサムスンSDIとの関係も密接だ。

BMWはリチウムイオン電池セルを製造していないが、将来の調達を確保するために直接コバルト鉱山の購入契約を締結している。また発想がオリジナルで、ドイツの化学大手BASFと組んで中国のCATLも加えて、ドイツ連邦経済エネルギー省の傘下にある国際協力事業団にアフリカのコバルト鉱山での人道的な現地人の労働の在り方についての研究を委託している。これは、電池が「善玉」である(「ドイツの自動車の動力源(1)」(2019年7月16日付掲載)を参照)条件を前もって考慮しているからである。

フォルクスワーゲン(VW)もリチウムイオン電池セルの製造については二の足を踏んでいた。ところが、2019年6月12日にスウェーデンのバッテリーメーカー、ノースボルトに9億ユーロ出資すると発表した。これは以前テスラに在籍していたピエテ・コールソン氏が立ち上げた会社である。VWは、この会社と組んで現在エンジン工場のあるザルツギッターで年間16ギガワット時(GWh)の生産能力のあるリチウムイオン電池セル工場の建設を2020年に開始し、2023/2024年に製造を始めるという。現在、VWはノースボルトの株式の20%を所有しているが、将来は50%にまで増やす8。VWのリチウムイオン電池の需要は2025年には150GWhに及ぶという。

ただしこのノースボルトはBMW、シーメンス、スイス産業用ロボットメーカーのABB、スウェーデンのトラッックメーカー、スカニアとも関係が深い。ザルツギッターにノースボルトの工場が設立されると、スウェーデンのシェレフテオ、ポーランドのグダニスクに次いで3番目の工場となる。またドイツの電池メーカー、ファルタはドイツ政府の支援を受けてフラウンホーファー研究機構とミュンスターでバッテリーセル生産技術の共同研究に着手することになっている9。以上が、バッテリーセルに関して欧州が東アジア勢に対抗しようとする試みである。

反対に東アジアのメーカーは、欧州での直接投資に積極的である。例えば、韓国のLG化学はポーランド、サムスンSDIとSKイノベーションはハンガリー、中国の比亜迪汽車(BYD)は英国もしくはドイツ10といった具合に続く。

欧州の電池メーカーが投資に消極的である理由
それでは、東アジアの電池メーカーがこれほど投資に積極的であるのに対して欧州の電池メーカーはなぜそうでないのか。彼らはアジアの生産者から高い値段を吹っかけられるとか、納入されなくなるといった心配はあまりしていない。これは、EV用電池は買い手優先の供給過剰状態にあり、今後もそれが続くと彼らが予想しているからだといわれる。このように思う人々が根拠とするのは、自動車用バッテリー市場についてのスタディーに記載されている内容を示したグラフ2である11。このグラフから分かるように、需要と供給の差は、これから2、3年は拡大傾向にある。供給過剰が継続し、2025年でもまだ30%余りもだぶついていると予測されている。

M000305-48-1

グラフ2:

 


このようにEV用電池の供給過剰が予測されているのは、多数の企業がEV需要が爆発的に増大すると見なしてバッテリー製造を始めたのに、需要がゆっくりとしか増えないと思われているからである。このグラフが示す内容に賛成する人々は、アジアのメーカーがチャンスを見たら殺到し、供給過剰になると思い込んでいるからである。同時に彼らは、欧州ではそれほど急速にEVは普及しないと考えている。

反対に、ドイツまたは欧州が自力でバッテリーセルを製造しなければいけないと考える人は、EVの普及がどんどん進み、バッテリーが足りなくなると心配する。彼らの頭の中には、下のグラフ3に示したような予測があるからだ12。メディアでは世界的な「バッテリーブームの到来」が囁かれて、東アジアの大手バッテリーメーカーは、比較的裕福な人が多く環境意識の高い欧州で、EVシフトが速やかに進行すると思い込んでいるのかもしれない。

M000305-48-2

グラフ3:

 


ドイツ連邦交通・デジタルインフラ省を諮問する専門家グループは、新車登録に占めるEVの割合が2025年までに25%に、2030年までには50%に到達するという目標を示している13。しかし、実際にEVの数が本当に増えていくかどうかはよく分からない。メーカーとメディア、政治家が騒いでいるだけに見えることもある。

EVシフトが二酸化炭素(CO2)排出量削減に役立つようにするためには、充電する電気がどこから供給されるのかという点が決定的に重要であるが、ドイツでは再生可能エネルギーによる発電は40%にすぎない。まだ稼働している原子力発電所を考慮しても、EVが消費する電力の半分はその発電のためにCO2を排出していることになる。また電池製造や、その原材料のリチウムやコバルトを採掘するためにも凄まじい大量の資源とエネルギーが消費される。環境に対する配慮からEVに反対する人も多いので、何か不祥事が起こって電池が「悪玉」にされることもあり得ない話ではない。

ディーゼル不正事件が起きた結果、ひと頃ドイツではディーゼル車を避けてガソリン車を購入する人が増えていたが、この数カ月はディーゼル車が再び人気を回復しつつある。例えば、2019年5月はディーゼル車の新車登録数は前年度比で16%増大した。ディーゼル車は「値引きしてくれるから」などといわれるが「悪玉」にも取り柄があるらしく、再び売れるようになり「ディーゼルルネッサンス」といわれている14

VWのツヴィッカウ工場はEVシフトの最前線で、2019年から10万台のEVが生産されることになっている。この工場を訪れたリポーターによると、従業員は本当に需要があるかどうか自信がなさそうだったという15。2018年度にこの国で新車登録された「純粋なEV」はわずか3万6062台で、全体の1%にすぎなかった16。ドイツ政府は2016年から、メーカーと一緒になってEV購入を助成している。EVと燃料電池車(FCV)の購入には4,000ユーロ(約49万円)、プラグインハイブリッド車(PHV)には3,000ユーロ(約37万円)といった具合に助成金が支給される。ところが需要が少なく予算が残ったままであることから、申請期間が2020年内まで延長された。

ミュンヘンの経営コンサルティング会社は、このままではEVに買い換える人などいないとして、法人用EVを思い切って税制上優遇し、現在のEVの助成額を倍にすることを提案した17。ということは、ドイツでEVを買うと日本円でおよそ100万円も支援してくれることになる。自動車がドイツ経済にとって重要だからだといって、本当にそんなことが政治的に実現するのだろうか。

EVは特に新しい話でない。周知のように20世紀初頭に乗用車を動かすための技術としては内燃機関に負かされた。EVは車体が重たくなる、充電に時間がかかる、走行距離が短くなる、資源の乱用につながる、値段が高くなるといった欠点があり、それは今も変わらない。ガソリンスタンドであっという間に給油できる車の便利さに慣れている者にはこれらのことは本当に面倒で、メリットが感じられないとされている。

ドイツ経済の強みは競争力のある中小企業で、そのほとんどは公共交通があまり発達していない中小都市にある。人口8,300万人のこの国には現在4,700万台の乗用車があるが、その大多数は、クルマ離れがしたくてもできない中小都市の住民に必要とされている。

ところが、ドイツの自動車メーカーは長年プレミアムカー志向を推進してきたこともあってか、経営者の頭の中にはEVとなるとテスラのイメージしかない18。その結果、自国民の半分以上を占める「マイカー族」を軽視しているうちに、自国のシェアまでも東アジアの競争相手に奪われることだってあり得る。その揚げ句、巨額の資金をつぎ込んだ中国市場でも期待通りに進行しないとなると、1945年以来順調にきたこの国にも厳しい事態が到来するかもしれない。

*********************************************************
7 https://www.daimler.com/dokumente/investoren/nachrichten/kapitalmarktmeldungen/daimler-mercedes-benz-ir-release-de-20190122.pdf
8 https://www.volkswagen-newsroom.com/de/pressemitteilungen/volkswagen-beteiligt-sich-an-northvolt-ab-5078
9 https://www.varta-ag.com/baden-wuerttemberg-gibt-startschuss-fuer-neues-batterie-forschungsprojekt/
10 https://www.electrive.net/2019/02/26/byd-beginnt-mit-bau-von-batteriefabrik-in-chongqing/
11 Berylls:BATTERIE-PRODUKTION HEUTE UND MORGEN.Studie zum Akkupack-Markt.März 2018.4ページ
12 https://www.handelsblatt.com/auto/test-technik/elektroauto-batterien-zu-schwer-zu-schwach-zu-teuer-seite-2/3827062-2.html 
https://www.handelsblatt.com/politik/international/e-autos-warum-deutsche-unternehmen-bei-der-batterieproduktion-zoegern/23085714.html
13 https://ecomento.de/2018/11/21/regierungsberaterin-claudia-kemfert-elektroauto-quote-2025/
14 https://www.n-tv.de/wirtschaft/Diesel-Autos-erleben-eine-Renaissance-article21066306.html
15 E-llusion Media,Capital:2019年3月21日。31ページ
16 https://www.kba.de/DE/Statistik/Fahrzeuge/Neuzulassungen/n_jahresbilanz.html
17 https://business-panorama.de/news.php?newsid=579287
18 https://ecomento.de/2019/05/16/volkswagen-chef-diess-zu-tesla-wir-werden-gewinnen/


M000305-48
(2019年7月4日作成)

欧州 美濃口坦氏

ドイツの自動車の動力源(1)

  • 発行:2019/07/16
  • 美濃口 坦

概要

ドイツで電気自動車(EV)シフトが始まったが、フォルクスワーゲン(VW)など自動車メーカーによるEV攻勢には反発や懸念の声も聞かれる。これは、自動車メーカーがEVシフトのために前例のない巨額な投資を行う結果、自動車業界の将来がどのようになるのかがはっきりしないからである。

ドイツの自動車メーカーは、そのプレミアムカー戦略がグローバル化による富裕層への富の集中と結び付き、長年にわたって本当にいい商売を続けることができた。ところが、ドイツ自動車工業会(VDA)によると、2019年1月の乗用車生産と輸出は前年比それぞれマイナス19%、20%である1。すでにメーカーの中には操業短縮の導入が検討されている工場も出現している。

この国の自動車業界は、その長い歴史で売り上げが急降下することも、また社会的に指弾されることもよくあり、その度に危機が声高に叫ばれた。そしてこれも面白いことだが、いつも業界は立ち直り、売り上げを以前より伸ばすことができた。でも今回はかなり様子が違うかもしれない。というのは、自動車業界の将来がどうなるかはっきりしないところがあるからだ。次に彼らを苛立たせるのは、今から自分たちが主役でなくなり、裏方で我慢しなければいけないという不安である。この事情は、2019年にアルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣により発表された「国家産業戦略2030年」の次の一節にも反映されている。

米国の人工知能(AI)の自動運転車プラットフォームにしろ、アジア製電池の搭載にしろ、未来の自動車については、ドイツをはじめ欧州は儲けの半分以上を失うことになる2

AIや自動運転、ビジネスモデルの問題は別の機会にゆずり、まず「電池の搭載」、すなわち自動車の動力源に関するドイツでの議論を紹介する。

「純粋なEV」に賭ける
2019年3月21日付のドイツの幾つかの新聞には「自動車メーカーは合意することができた」といった意味の見出しの記事が出た。それだけではない。VDAからフォルクスワーゲン(VW)が脱退する可能性まであったことに読者は驚く。というのは、ドイツ自動車のもう一方の雄・BMWのハラルト・クリューガー最高経営責任者(CEO)が「これからも私たちは一緒になってVDAを支える」と述べているからだ3。自動車業界が一致団結して、このように強力なロビー団体を通して政治力を発揮するのはごく普通のことであるが、今回のように大きなメーカーが出て行く話は異例なことで、業界が陥った厄介な事情を示す。

2018年11月にVDAは、自国の自動車メーカーがEVシフトに踏み切り、自動車業界全体で2020年までに400億ユーロも投資し、モデル数も現在の30ぐらいから100近くまで増大させると発表している。ところが、そのうちに不協和音が聞こえてくるようになった。

欧州連合(EU)の厳格な二酸化炭素(CO2)排出規制をクリアするといっても、いろいろな可能性がある。ガソリンやディーゼルエンジンの燃費を改善する道もある。周知のように、ドイツの自動車業界は燃費の良いディーゼルエンジンを活用してCO2排出量を減らそうとした。

地味ではあるが、バイオ燃料と化石燃料を混合すると内燃機関でのCO2排出量を減らすことができる。また、アウディをはじめ多くの企業が長年努力してきた合成燃料(e-fuel)も原油を必要としない。再生可能エネルギーから得られた電力によって水とCO2からガソリンやディーゼル燃料を合成する4。この方法であるとこれまでのガソリン車やディーゼル車がそのまま使えて便利だ。

EVといっても、電池を充電して電気モータで走るEVだけでなくハイブリッド車(HV)もあり、それに外部から充電できるようにしたプラグインハイブリッド車(PHV)もある。また「電池」といっても水素を電気に転換して自動車を走らせる「燃料電池」方式もある。どの企業もこれまでいろいろな可能性を考慮して研究・開発をしてきた。

VWはこのようにいろいろな可能性の中から電池と電気モータだけの「純粋なEV」に焦点を絞るという。それは、この方式のみがCO2排出量をゼロにし、地球温暖化防止に貢献できるという信念からだと説明する。これは一企業の見解にすぎないのに波風が立つのは、VWが自社の方針を業界全体に押し付けていると感じられるからだ。同社のヘルベルト・ディースCEOは機会があると「いろいろな技術がもたらす可能性に対して開かれているべきだ」という見解は一般的に正しくても、現時点では誤っていると批判する。ダイムラーやBMWをはじめ多くの企業はそう考えない。例えば、ボッシュはEV関連の製品も扱っているが、スウェーデンの企業と提携して燃料電池スタックを開発し2022年までには市場化するという5

VWはディーゼルゲートの汚点を消すためにも内燃機関との縁切りを強調したい。そのためには「純粋なEV」が一番分かりやすいからだと揶揄する人も少なくない。さらにもっと奇妙なのはドイツのメディアで、自国のメーカーがディーゼル不正事件によってEVシフトに追い込められたかのように報道している。この問題で非難されたのは、不正な操作をして窒素酸化物と微粒子を基準以上に放出することである。ところが、メーカーが自国のディーゼル車の購入者に対して浄化装置を取り付ける責任もろくろく取らないでいるうちに、いつの間にかCO2排出量を減らす地球温暖化防止の「勧善懲悪」の物語にすり替わり、その結果、「内燃機関が悪玉で電池が善玉」という筋書きになってしまった。

中国に対する依存
もうかなり前から、ロイター通信は、国際的自動車メーカー29社がEVシフトのために5~10年後に投資や調達費として計上した金額を集計して発表している。下のグラフ1は2019年に入ってから出された数字を基に上位13社を棒グラフで表示したものだ6

M000305-47-1

グラフ1:

ロイター通信側によると、数字は各メーカーが公表したものであり、通常の研究・開発費といった別項目に含まれていることもあり、現実の投資額はもっと大きいそうだ。このグラフにはないが、29社の全体の金額は3,000億ドルに及ぶ。とすると、VWの投資額は910億ドルでダントツであり、世界中のメーカーによる投資総額の3分の1近くも占めていることになる。

この金額を見たら、ディーゼル離れを強調しているうちに数字がどんどん膨れ上がってしまったような気がしないでもない。またVWが「純粋なEV」を少しでも売りやすくするために、自国の自動車業界を一本化し政府に圧力をかけたい気持ちになるのも分かりやすい。というのは、業界全体が「純粋なEV」で固まったら、政治の方も充電スタンドや配電網整備などのインフラにも本腰を入れなければいけない。HVがウロウロすると、政治家はインフラ整備に真面目に取り組まない危険がある。

29社全体の3,000億ドルの45%に相当する1,350億ドルは、中国市場に向けられるという。ドイツ自動車メーカーについて見ると、VWは910億ドルのうち455億ドル(50%)が、ダイムラーは420億ドルのうち219億5000万ドル(52%)が、BMWは65億ドルのうち3億9000万ドル(6%)がそれぞれ中国へ流れる。ということは、比較的消極的なBMWは別にしても、中国のEVシフトのために投下される資本の半分近くをVWとダイムラーの2社が負担することになる。ちなみに、米国の自動車メーカーを例に取ると、全体の金額は390億ドルで、中国市場にはせいぜい50億ドル投下され、残りは国内のEVシフトのために使われるので、中国の占める割合は13%にすぎない。

このような状況を考えると、中国に対するドイツメーカーの依存度はますます強くなる。また、これらの投資が報われない可能性もある。2018年に右肩上がりだった中国の自動車市場の売り上げが下がったが、ドイツはシェアを24%に上げることができた。ところが、ドイツメーカーが中国とのジョイントベンチャーで生産したEVのシェアは0.4%にすぎない。とすると、EVはドイツにとって苦手な分野ということになり、今からではEVで世界一になりたい中国が以前のガソリン車のようには買ってくれないかもしれない(とはいっても、ドイツのメーカーはまだ儲けることができると夢見ているようだ)。

しかし、以上述べたことは投資してもあまり儲からないだけの話である。別のもっと厄介な依存関係がEVシフトにより生まれる。それは連邦経済エネルギー省の「国家産業戦略2030年」の中でも心配されているバッテリーである。上記のロイター通信によると、EVシフトに向けられるVWの910億ドルのうち570億ドル(63%)、ダイムラーの420億ドルのうち300億ドル(71%)、BMWの65億ドルのうち45億ドル(69%)はバッテリーのためである。ということは、どのメーカーもこの問題に高い関心を向けていることになる。

最初はドイツのメーカーも、東アジアの電池メーカーの供給に依存しないために、欧州も自前のリチウムイオン電池セル工場を持たなければいけないと考えた。それは、遠い地域から輸入する場合、何か起きて生産ラインが止まるのが心配だからである。次に、儲けの大きな部分が東アジアに持っていかれるという問題がある。そのうちに、EVシフトによる雇用喪失を心配する労働組合や政治家は別にして、メーカーで経営陣に近い人々は自前の電池セル工場の建設に消極的になる。それは、アジア勢にすっかり立ち遅れていることや、膨大な投資が必要であるからだ。また電池など原材料費が高く、自分たちで作っても利が薄いという見解もよく聞かれるようになる。さらに、現在のリチウムイオン電池から次世代に移るときにバッテリー製造を始めるべきだと考えている関係者も多いようだ。

ドイツには、思い出したように欧州の地政学的な意味を強調する人々がいるが、彼らはEUの、特にドイツ・フランスによるバッテリー製造や開発の共同事業を提案する。これまで具体的になったのは、ドイツメーカーのオペルを含むグループPSAと産業用バッテリーのサフトの共同事業である。ちなみに、サフトはフランスの国際的石油資本・トタルに属する。

*********************************************************
1 https://www.vda.de/de/presse/Pressemeldungen/20190204-deutscher-pkw-markt-mit-ordentlichem-start-ins-autojahr-2019.html
2 Nationale Industriestrategie 2030(国家産業戦略2030年)の10ぺージ
https://www.bmwi.de/Redaktion/DE/Downloads/M-O/nationale-industriestrategie.pdf?__blob=publicationFile
3 https://www.dw.com/de/autobauer-einigen-sich-bei-der-e-mobilit%C3%A4t/a-47999074
4 https://www.audi-press.jp/press-releases/2018/b7rqqm000000lqor.html
5 https://www.manager-magazin.de/unternehmen/autoindustrie/brennstoffzelle-robert-bosch-kuendigt-serienfertigung-fuer-elektroautos-an-a-1264936.html
6 https://ecomento.de/2019/01/17/investitionen-elektromobilitaet-weltweit/

(2019年7月4日作成)

欧州 美濃口坦氏


M000305-47
(2019年7月4日作成)

より根源的な漠然とした地理的な認識パターン

著者のサーシャ・スタニシチはテレビなどのインタビューで見ると本当に感じのいい好青年である。書いたものも読ませる。でも本書を読みながら、どうしてあのような紛争になったのかを著者がどう考えているのかが私にはとても気になった。

この点について彼は次のように説明している。

  • 当時のユーゴ社会主義連邦内の共和国のあいだに経済的格差があったが、強いところは自国の負担を不当と感じ、連邦から出たいと思っていた。弱い共和国は格差を不公平と感じていた。これは再分配の問題で、一国のなかにもよくある問題である。またEUのなかでも似た話だ。
  • 共和国はセルビアとかクロアチアとかムスリムとかいった民族、文化、宗教の単位と部分的に重なっていたが、共和国もしくは民族の間はしっくり行っていなかった。
  • チトーの死後、著者の見解では、連邦を統合する接着剤の社会主義イデオロギーがだんだん効力を失って来ていたという。
  • それぞれの共和国では、ナショナリズム(民族主義、ナワバリ主義)を煽る政治的指導者が強まった。例えば、スロボダン・ミロシェヴィッチ、フラニョ・トゥジマン、アリヤ・イセトベゴヴィッチがそうだ。

私も1990年代の紛争中だいたいこのように思ってドイツのメディアを通して紛争を見ていた。以上の1)から5)までのことは決して間違っていない。でも重要なことが欠けていると思っている。これを考慮しないとこの戦争を誤解したままにすることであり、同時にドイツ政府、また西欧、その影響下にあるメディアの公式的なユーゴ紛争のイメージを鵜呑みにすることである。私がこのことを感じはじめたのは90年代の中頃からであった。

その経緯を説明しはじめると長くなるので、結論だけをいうと、この紛争は、冷戦、それどころか、おそらくその前の時代の戦争を継続し、チトーのユーゴ連邦を崩壊させたと考えるほうが現実に近くなるように思われる。そのような解釈になるのは、普通メディアではあまりはっきりと出て来ない諜報活動という側面を考慮しているからである。

冷戦時代に西独の諜報活動をしていた連邦情報局(BND)は、当然なことだが、共産主義の東欧圏の国々にスパイ網をもち、米情報機関と協力するものの独自の諜報活動をしていた。

次にこのドイツに協力するスパイ網、すなわち強固な人脈はどこから来たのかというと、ドイツ敗戦後米軍の支援で西独にできた「ゲーレン機関」から由来するものである。これは、ナチドイツの諜報活動の指揮者の一人であったラインハルト・ゲーレンが敗戦後に将来の対ソ戦に備えるために第二次大戦下東欧・ソ連圏でつくりあげた諜報人脈を温存するために設立した組織である。ソ連との対立を予想していた米国もこの組織を利用することにした。西独誕生後の1956年にドイル連邦情報局が誕生するが、これは上記のゲーレンが初代の局長におさまる。

1945年以前の対ソ戦の時も、その後の冷戦下も、東欧・ソ連圏の対独協力者は、言うまでもないことだが、極端な反共主義者であり、ファシストであった。ユーゴの場合も、比較的よく知られているクロアチアに限れば、第二次大戦下もまた1945年以降も対独協力者は反セルビアで、クロアチア独立や大クロアチア主義を掲げる組織・ウスタシャに関係する人々であった。

冷戦が終了する前の80年代のはじめから、また冷戦終了後もドイツの諜報機関がこのような長年の協力者の意図に従って動いていたとよくいわれるが、これもどこか当然なことである。ユーゴ紛争勃発後、いつも米国や英国の意向を気にするドイツが当時独断でクロアチアの独立宣言を認めたのも、(私には当時異様に思われたが、)このような長年に渡る諜報活動レベルでのウスタシャとのコネクションを考えるとよく理解できる。

次に重要なのは、ドイツのメディアの流れが当時急速に「セルビア悪玉」対「クロアチア善玉」になってしまい、最終的には西側全体のユーゴ紛争解決案に影響した。

私もはじめのうちはドイツのメディアに影響されて、このようなドイツ式勧善懲悪のメガネでバルカン問題を眺めていたが、そのうちにだんだん懐疑的になる。当時諜報活動的側面はメディアでは報道されず、全然といっていいほど知らなかったが、それでもだんだん胡散臭いものが感じられたからである。

第二次大戦下、ヒットラーはバルカン作戦を実行する。ドイツ軍はウスタシャと組んで、抵抗するセルビア人組織のチェトニックと戦った。90年代メディアでセルビア人の残酷さに憤慨するドイツ人を見ていて、1941年ナチの党機関紙『フェルキッシャー・ベオバハター』のバルカン報道を読んで怒っている「銃後の民」を連想した。

もちろんナチ時代とは異なり、戦後西ドイツでは旗印は変わってしまい、反共であり民主主義や自由を防衛するためになったが、それでもそのようなイデオロギー以前のより根源的な漠然とした地理的な認識パターンが昔から存在していて、人々の意識を規定しているように思えて仕方がない。

こう考えていくと、独社民党が始めて、最後には冷戦終了と東西ドイツ統一として結実した「東方外交」は例外的なものであったことになる。ところが、周知のように冷戦が再開してしまい、「欧州共通の家」のことも夢もまた夢になったが、これも漠然とした地理的認識パターンがいかにこの国の人々の意識の中で強いかをしめす。最近ではウクライナ問題でのドイツの反応や対応を見ていて私にはそう感じられた。そのうちにウクライナとドイツの過去に築き上げられた諜報コネクションの噂も耳にする。

3.6.2019

「出自とは何か」を深く考える 

世界の書店から
田辺拓也撮影

Herkunft(出自)』の著者サーシャ・スタニシチは、旧ユーゴスラビアのドリナ川河畔の町ヴィシェグラードでボシュニャク人の母とセルビア人の父の間に生まれた。一家は1992年に勃発したボスニア紛争を逃れてドイツ南西部のハイデルベルクに移住。当時14歳の彼は、現地の学校へ通い、後にドイツ語で創作を始める。

 2006年の自伝的デビュー小説『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』は大ヒットし、約30の言語に翻訳された。本書は著者が実名で登場し、より自伝的である。舞台はドイツとボスニアを行ったり来たりするが、今回、特に重要なのは、著者のドイツでの体験だ。

 著者の一家はハイデルベルク郊外の殺風景な工業地区に暮らし始める。近くのガソリンスタンドの駐車場は、さまざまな国籍や民族的な背景を持つ難民の少年たちのたまり場だった。著者によると、少年たちの間では、どこから来ようが特別扱いされず、「出自は争いの種にしない」という暗黙のルールがあった。

 著者がこんなことを指摘するのは、故郷の学校で正反対のことを経験したからだ。ある日、セルビア人の生徒が、ボシュニャクとセルビア、クロアチアの欄のある紙を示し、生徒たちに自分が所属する「出自」の欄に名前を書き入れるよう求めた。とたんにボシュニャク人の生徒が反発して小競り合いが起き、教室内は大騒ぎになる。

 ほどなくして、ボシュニャク人に対して腕に白い布を巻くよう強制する町が出てきた。そのうちに「出自は紛争に値する」ようになり、出自の異なる人々を殺したり、レイプしたりして追い出す「民族浄化」につながった。

 今またドイツを含め欧州で排外感情と自国の利益優先のポピュリズムが強まっている。著者は「出自」の意味を考え直したくなり、本書を執筆したという。

 彼にとって出自とは、「ドイツ人か、外国人か」といった二者択一でなく、今の自分を成り立たせるいろいろな要素の集合体だという。そこには血縁も、地縁も、言語も、文化も、居住する国も、個人的な体験も含まれる。ハイデルベルクのガソリンスタンドのたまり場も、紛争もまた、著者にとって自身を構成する重要な要素で、みずからの「出自」なのである。  (ここまで書いていて思い浮かんだこと)

■『GRM』 AIと民営化、突き進んだ先の近未来

本の題名『GRM』の意味が分からず書店の店員に尋ねると、「グライム(Grime)」の略だそうだ。グライムとは、ヒップホップなどから派生した英国発祥の音楽ジャンルで、若者に人気があるという。本書の紹介動画をウェブサイトで見るよう勧められ、さっそく実行した

ビートの利いた音楽が流れ、廃虚となったビルを背景に、フードを目深にかぶった少年が登場。《やつらは他人から何かを奪うチャンスを逃さない》《やつらは邪魔するものは何もかもぶっつぶす》と語り、最後に《戦争をお望みなら、相手になるぜ》というセリフが聞こえ、廃虚の中にいた少年が仲間たちとグライムに乗せて体を揺らす。

この瞬間、私には世界有数の資産家でもある米投資家ウォーレン・バフェットの発言が思い出された。リーマン・ショックの前で10年以上前だが、彼は米紙で、「富裕な人が貧乏な人と戦争をしていて、自分が属する金持ちの陣営が勝つ」という趣旨の発言をして物議を醸した。その後も貧富の格差は拡大するばかりで、市場の自由競争を重んじて格差を容認する新自由主義の話になると、今でも当時の彼の発言が持ち出される。

『GRM』のテーマは、民営化と人工知能(AI)の普及だ。著者は東ドイツ生まれの作家でスイスに在住。彼女はドイツの将来がどうなるか知りたいと思い、民営化が進み、その結果、AI導入に抵抗が少ない英国で、1年あまりかけて人々の話を聴き、本書が生まれたという。

小説の舞台は、英中部マンチェスターの近くの町ロッチデールと首都ロンドンである。設定はあまり遠くない未来で、英国のEU離脱は成就し、経済で中国企業の影響が強まっている。警察と軍隊は民営化され、福祉予算のカットも力強く進行中。

物語の中心人物は思春期にある子どもたちだ。物語の中で、少女は7歳になると化粧をし、セックスの初体験は平均10歳と低年齢化。インターネット上でのポルノ閲覧も常習化している。

主人公はドン、ハンナ、カレン、ピーターの4人の仲間で、ドンは母親が黒人である。この少女には注意欠陥・多動性障害があり、父親には愛人がいて帰宅しない。母親にも愛人がおり、この男はドンと性的関係を持とうとする。ハンナはアジア系の家庭で育ったひとりっ子で、優しかった母親は銃撃事件に遭遇して死亡し、父親も後を追って自殺。カレンは母子家庭で育ち、好きになったパキスタン系の少年から薬を飲まされて意思を奪われ、ロンドンから来る複数の男相手に売春を強要される。仲間で唯一の男の子のピーターは最近ポーランドから来たばかりで、母子家庭のひとりっ子。自閉症で、ハンナに手を握ってもらわないと不安で仕方がない。

子どもたちの目には、周囲の大人は「負け組の落後者」と映る。それは失業しているせいだ。それまでは肉体労働が機械に代わるだけだったのが、今度は頭脳労働が合理化される。仕事の手順がアルゴリズムで定式化できるとAIの出番になる。この結果、本書の中では、職を得ることはぜいたくである。プログラマーになって勝ち組に入ろうとしても、その種の仕事ほど定式化されやすい。もはや本人の努力の問題でなくなりつつある。

私たちのモラルは、仕事をし、それが金銭で報われるシステムのなかで機能してきた。今や仕事を失い、作品に登場する人物は大人も子どもも、貧富を問わずほとんど話さない。その人間関係は、セックスと暴力に支配されていて、不気味である。

医療サービスなどの社会保障がどんどん削減される一方、住民は精神に作用して元気にしてくれる薬剤を安価に入手できる。またスマホなどの情報端末は国家から支給され、オンラインサービスを使った暇つぶしにはこと欠かない。

本書で4人の少年少女が抵抗に踏み切るきっかけになったのは、最低限の生活費が国家から支給される「ベーシックインカム」の導入である。受給の条件として、国民は個人情報だけでなく、皮下チップを埋め込んで健康データを提供することに同意しなければならなくなった。また、個人の支払い能力などをもとに国民を格付けする制度に似た「ソーシャルスコア」が導入され、素行が良い人には支給額が増える完璧な監視社会に移行する。

本書の読者の中には、物語が英国の未来でなく、現在のドイツ社会もこの方向に向かって歩みはじめていると感じる人も少なくないようだ。

■『Kaffee und Zigaretten 』 憎悪の感情は人間の愚かさゆえか

本書には、小説でなく、思い出、人物論、軽妙なエピソードなど48点が集められている。半ページにも満たないものから9ページのものまであり、内容も多岐にわたる。

題名の『Kaffee und Zigaretten(コーヒーとたばこ)』は、著者が執筆する時に欠かせない品である。そのために題名に関連するエピソードも出てくる。その一つは、ヘビースモーカーで知られた故ヘルムート・シュミット元西独首相(1918~2015)のもので、メンソール味のたばこをひっきりなしに吸う。彼にとって味などはどうでもよく、自分もいつか死ぬ存在であることを絶えず意識するために喫煙していたという著者の指摘は面白い。

ドイツ人読者が関心を抱くのは、著者の自伝的側面である。その理由はフォン・シーラッハ家が貴族としてドイツでは特別な名家であるからだが、それだけでない。フェルディナントの祖父バルドゥールはヒトラーを崇拝し、第三帝国で青少年教育を担当していた。当時から、御曹司と成り上がり者集団ナチとの結びつきは奇妙とされた。

バルドゥールは、第2次大戦中はウィーン大管区の指導者で、ユダヤ人連行の責任者であった。彼はこの罪のために戦後、戦争指導者を裁くニュルンベルク裁判で20年の禁固刑に処される。孫のフェルディナントが子どもの頃、石造りの壁に囲まれた公園のような大きな庭のある家に住んでいたことや、15歳のときに自殺をしようとしたことが読者に明かされる。

本書の面白いエピソードの一つは、ウクライナ人女性弁護士が、著者とベルリンのポツダム広場にある喫茶店で話す下りだ。彼女は、東部ウクライナで人々が監禁されて拷問されたり殺されたりしていると憤慨する。そのうちに、話が彼女の家族に移る。祖父母はウィーンに住んでいたユダヤ人で東欧へ連行されたが、子供だった彼女の母親は途中で逃げ、ホロコーストの運命を免れた。ということは、ウィーン大管区指導者だった著者の祖父バルドゥールが彼女の祖父母を死に追いやったことになる。

著者は、祖父が反ユダヤ主義者だったことを示す「欧州で活動するユダヤ人は誰もがヨーロッパ文化に危険をもたらす」とか、「(彼らを)連行することこそ欧州文化に対する大きな貢献」とかいった発言を紹介。その上で「祖父の、このような発言や行動に対する怒りと恥ずかしさから、自分は今の私になった」と告白する。

著者は、ドイツで反ユダヤ主義が再び強まることを心配している。そのために、彼はウクライナ人女性に「どうして非人道的な罪が繰り返されるのだろうか」と尋ねる。彼女は、ホロコーストとウクライナでの犯罪は同一視できないとしながらも、「どちらも憎悪から始まる」と語る。彼女の見解では、人間は、愚かであるために憎悪を抱くようになるという。

このような見解はときどき耳にするが、本当だろうか。実情は、愚か者扱いされるから憎悪が生まれるのではないのだろうか。

前述したシビレ・ベルクの『GRM』を例にすると、ウォーレン・バフェットの「戦争」に負け続けている人々がいる。ここで富の偏在を是正しないで、彼らを監視体制に組み込もうとするなら、これは負け組を愚か者として軽視することであり、憎悪を植え付けるのに等しいのではないか。

ドイツには、未来に漠然と破滅的なことが起こることを心配する人が少なくないが、このような事情と無関係ではないだろう。

ドイツのベストセラー(フィクション部門)

 5月4日付Der Spiegel誌より

1 Menu surprise

Martin Walker マーティン・ウォーカー

「警察署長ブルーノ」シリーズ。今回はグルメと著者の本職の国際関係。

2 Kaffee und Zigaretten

Ferdinand von Schirach フェルディナント・フォン・シーラッハ  

ドイツを代表する作家の随想、人物論、批評など48の小品集。

3 Die ewigen Toten

Simon Beckett サイモン・ベケット 

閉鎖された病院の解体中、設計図にない密室と死体が見つかる。

4 GRM

Sibylle Berg シビレ・ベルク

貧富の格差と人工知能による監視社会に反逆する4人の少年少女。

5 Der Bücherdrache

Walter Moers  ヴァルター・メース  

本からできた「書物の竜」は経営不振の書店を助けない。

6 Mittagsstunde    

Dörte Hansen デルテ・ハンゼン

北ドイツのライ麦畑が広がる村落を舞台に時代の変化を映す人間模様。

7 Herkunft

Saša Stanišić サーシャ・スタニシチ 

戦乱のユーゴからドイツに逃れて来た著者の自伝的要素の強い作品。

8 Das Verschwinden der Stephanie Mailer

Joël Dicker  ジョエル・ディケール  

20年前に解決したはずの事件が蒸し返される。

9 Die Splitter der Macht

Brandon Sanderson ブランドン・サンダースン

幻想小説「嵐光録」第6巻。秘密の教団をさぐりに山奥に行く女性。

10 Die Liebe im Ernstfall

Daniela Krien ダニエラ・クリーン  

旧東独で若くして東西統一の「苦い自由」を経験する5人の女性。